5.ライン調査

quad調査地点図

1988年から2003年にかけて実施されたサンゴ調査では、海岸から礁斜面までの断面的な地形変化やサンゴ分布を調べるために、3本の調査測線に沿って一定間隔でサンゴや底生生物を調べるライン調査が行われました。この過去の調査結果を活用しつつ、礁斜面における垂直方向のサンゴ群集構造に関する情報を得るため、礁池部分をのぞいたライン調査を3年ごと(2006年、2009年、2012年)に継続しています。

ライン調査結果

調査結果はkmz形式となっています。
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ライン調査方法

ライン調査法

ライン調査の野外作業は、4名のダイバーで実施します。過去に設置された測線の位置を参考にして、1名のダイバーが礁嶺(サンゴ礁沖合の干出する部分)付近から沖合向けに、水深10~15mまで測線を設置します。2名のダイバーは、各測線の起点から10m間隔に2mx 2mの方形枠を置き、その内側の海底と周囲の景観を写真撮影します。1名のダイバーは、枠内でみられるサンゴの属名または種名と位置を水中ノートに記録します。
撮影した海底の画像は、実験室内のパソコンで専用ソフトウェア(米国立サンゴ礁研究所製、ポイント・カウントCoral Point Count)を使用して解析します。画像に写し込まれているサンゴ群体の投影面積を測定して個々のサンゴ群体の被度と合計被度を求めるとともに、科別の相対被度(合計被度に対する科別の被度の割合)を求めます。


ライン調査結果

測線1

測線1は山川区域の南端近くに張り出したサンゴ礁の礁斜面に位置します。 旧測線では、海岸の起点から30m地点までは干出岩盤、30mから100mまでは水深2m前後の礁池様の礫底、100mから170mまでは岩盤底で、 1989年当時は被度80%に達するスギノキミドリイシの単一群落がみられました。 1994年までにこの群落はオニヒトデの食害をうけて大きく衰退し、1998年にはごくわずかに生き残っていた他のミドリイシ科 (コユビミドリイシ、クシハダミドリイシなど)もほぼ全滅してウネタケを中心とするソフトコーラル群集へと移行しました。 現在の測線起点は旧測線の150m地点付近にあたります。起点から水深6m付近までは急傾斜の岩盤が続き、 それ以深は礫底が卓越する斜面です。 今回の調査(2015年)では、総サンゴ被度は0.3%(20m地点)から17.5%(40m地点)の範囲でした。 被度が低い20m地点、30m地点、50m地点は礫底、60m地点は砂泥底でした。 礁縁で被度が高い10m地点ではキクメイシ属とハマサンゴ属がサンゴ群集の大部分を占めていましたが、 同程度の被度の40m地点ではクサビライシ科が卓越していました。

測線2

測線2はアクアポリス跡付近の礁斜面に位置します。 旧測線では100mまでが干出岩盤または亜潮間帯で、ハマサンゴ科の群体がまばらにみられる程度でした。 60mから150m付近まではゆるやかに、150mから終点までは比較的急な傾斜の斜面が続きます。 1989年頃は礁斜面上部で小型のハマサンゴ科がわずかにみられるだけでしたが(5%以下)、 1994年にはコユビミドリイシやクシハダミドリイシを中心として被度50%をこえるサンゴ群集が形成されていました。 この群集は1998年の白化で全滅し、その後も回復していません。150m地点から沖の礁斜面ではハマサンゴ科と キクメイシ科が被度の比較的低い状態で消長を繰り返しています。 今回の調査(2015年)では、総サンゴ被度は2.6%(150m地点)から45.7%(50m地点)の範囲でした。 2012年の前回調査と大きく異なっているのは、礁嶺下部に相当する50m地点で被度の高い卓状ミドリイシ科サンゴの群集がみられたことです。 60m地点から90m地点まではキクメイシ科が、それ以遠はハマサンゴ科が徐々に目立つようになる傾向は前回と同じでした。

測線3

測線3は水族館前のサンゴ礁を斜めに横切るように設置されていました。 海岸から160m地点までは礁池、310m地点付近までの長い範囲が傾斜のゆるやかな礁嶺部と礁縁部で、 310m地点から終点の420m地点にかけて急傾斜の礁斜面となります。 1989年には礁縁から礁斜面上部にかけてサンゴがほとんどみられませんでしたが、 1994年の調査時にはコユビミドリイシ、ヒメマツミドリイシ、クシハダミドリイシを中心とする 被度50%以上のミドリイシ科群集が形成されていました。 しかし、1998年にはこれらの群集は白化現象の影響で死滅し、2003年時点ではごくわずかの小型ミドリイシ科群体がみられただけでした。 礁斜面ではハマサンゴ科とキクメイシ科の小・中型群体が優占的で、被度は1994年を最高として徐々に減少しています。 今回の調査(2015年)では、総サンゴ被度は1.1%(170m地点)から9.8%(210m地点)の範囲でした。 150m地点から170m地点にかけてはミドリイシ類が卓越していました。 それ以遠ではミドリイシ科の割合は徐々に減少し、水深の増加につれて、 キクメイシ科とハマサンゴ科が卓越しました。被度や群集構成の変化傾向は前回調査と同様でした。

測線4

測線4は備瀬灯台の北西側に張り出した礁縁から礁斜面にかけて2006年に新設した測線です。 備瀬付近のサンゴ礁は北西からの季節風の影響でよく発達しており、礁嶺の起点付近から礁縁までは 傾斜がゆるやかで幅が広くなっています。 礁縁を超える40m地点付近から急な傾斜が水深7m前後まで続きますが、 いったん1~2m浅くなり、80m地点を超えたところから再び斜面が続きます。 今回の調査(2015年)では、総サンゴ被度は4.7%(60m地点)から37.7%(150m地点)で、 他の測線と比較して全般的に被度が高かったです。50m地点から80m地点にかけてはミドリイシ科、 キクメイシ科とハナヤサイサンゴ科が拮抗してサンゴ群集の大部分を構成していました。 90m地点から150m地点まではハナヤサイサンゴ科がサンゴ群集の50%前後を占める主要群で、 キクメイシ科またはミドリイシ科が続いていました。

ライングラフ